読了報告 森見登美彦『太陽の塔』()

 出だしからいきなりサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』のパロディというサービス精神満載の小説。
 オンライン書店やその他書評サイトではこの小説をして「独特の文体とリズム」としているのだが、この文章はアレだ。たぶん、夏目漱石の影響がある。
 江戸落語の中に見られる皮肉った笑いを、夏目漱石は小説に取り込んだのだが、その夏目漱石の「陽」の部分を持ち込んで、そしてそれをうまく消化して自分のものにしている。


 内容はしがない(=モテナイ、冴えない、金がないetc)大学生の偏屈な友人達の観察日記。
 上記のような文章でそのような日常を描かれれば日記も小説になるのだなぁ、という印象。


 幸せレベルが普通よりやや下の大学生になら傍から読んでいて「ははは、こいつら馬鹿だ」と等身大になって笑える内容。
 モテナイ男が集まったグループ。そういう連中が集まってやることといえば、カップルへの呪詛であり、クリスマスへの呪詛であり。そして、女性の排斥であり…。
 こういう青春もありなんだってば。