小説
騎士は恋情の血を流す The Cavalier Bleeds For The Blood作者: 上遠野浩平,椋本夏夜出版社/メーカー: 富士見書房発売日: 2009/08/06メディア: 単行本購入: 4人 クリック: 55回この商品を含むブログ (59件) を見る過去のブギーポップシリーズを髣髴とさせる…
青酸クリームソーダ(佐藤友哉) 既存の「ありきたり」に文句を言いたいのは分かるのだけれど、結局はそれにおんぶされながら物語を進めておいて目的地に到達しておいてから運んできてくれた人に文句を言うのは筋違いだと思う。 壊すことに夢中になるのはいい…
全13作の短編集。 全ての作品に共通して見られるのは現実と虚構を破壊しようとしている模索感。 熱心に読んでいると「あ、ここで虚構と現実の境目が壊れた」と思わされる一文がどの作品にも必ずあり、面白い。 作為的なものが偶然かは知らないけれどただひた…
こういうことを小説で書いてしまえる人間は世間が汚らわしく見えて仕方がないのではないか。 人間のエゴや醜さ、日本人特有の精神の弱さ、怠惰さの観察は確かなもので、それをエンターテイメントにまで昇華する技術も見事。文学と大衆小説の合いの子の一つの…
こういう小説の評価は非常に困る。 はじめにドラッグありき。そこに同性愛とか不良少年・少女を絡ませればいかにも面白そうな話は出来上がる。だからこそ却って慎重に読み進めるべき作品ではあると思う。物語りを作る人は果たしてそういう題材を取り扱うこと…
「母親の葬儀で涙を流さない人間は、すべてこの社会で死刑を宣告される恐れがある、という意味は、お芝居をしないと、彼が暮らす社会では、異邦人として扱われるよりほかはないということである。ムルソー(主人公)はなぜ演技をしなかったか、それは彼が嘘を…
よく童話の原作が残酷であることを薀蓄語りしつつ面白がる人がいますが、そういった物の見方はとんだお門違いだと思います。 童話は子どもの読み物だから、それは牧歌的なファンタジーで当たり前だと考えるのは想像力の欠如が生んだ大人の偏見でしかありませ…
「じっくり考えてみなさいよ。まだ上手に歩けなかったころ、尻餅をつくとお母さんはあんたのお尻に四十点って書いたわけ?」 「書かなかった」 「それでも、ちゃんと歩けるようになったでしょ?」 イタリアの童話作家、ロダーリの短編集。短編の一つ、『お喋り…
『カオス レギオン 聖戦魔軍篇(富士見ファンタジア文庫)』の過去が語られるシリーズの第2弾。聖地シャイオンを舞台に、領主ロムルスとその子にして後継者のレオニスを巡る物語。 全体の完成度、そしてその完成度がもたらす風景描写力はまさに目に見えて迫…
『マルドゥック・スクランブル』や『スプライト・シュピーゲル』が面白かったので読んでみた作品。 巨大なガジェットを巧みにそれでいて力強く組み込んでいく先生の持ち味はファンタジーでも余すところなく発揮されています。 強い信念を持った主人公達の造詣…
久々に刺激的な小説を読みました。 脇役でしかない人物を敢えて軸に据えた構成。全四話構成なのだが、それぞれの話は完全に独立しているにもかかわらず脇役だけが共通した登場人物であるという変わった構成。 それがただ奇をてらっただけではないということ…
何か「無限のリヴァイアス」思い出した。 漂流した船が食べ物に飢えて恐ろしいことが始まる話。 カニバリズムを思いとどまらせるのは、文化とか思想なんだなぁとか思った。
1巻1ヶ月の全12巻ようやく読了。当初、物語の方向性が示されないままふわふわした空気の中物語が進み中盤になってようやく骨格らしきものが見えてくる。 「何か」を探すというテーマはおとぎ話の時代から使われてきた物語のテーマだけれどもここまで抽象性の…
シリーズ第三弾。今回は全3話で再び各キャラクターをそれぞれピックアップしたストーリーが描かれています。 今作では「自分のルーツ」をテーマにしてそれぞれの過去を掘り下げていきます。 特に第2話の「陽炎」の話が秀逸で「人殺しのトラウマを回避するた…
賛否両論あるようですがいいんじゃないでしょうか。 現代の社会病理的なものを現代の少年少女の鬱屈と絡めて、説得力のあるファンタジーにまで昇華したセンスは評価に値すると思います。 なんだかんだで物語の構成力も良いと思います。食事シーンの後に過食…
今回の対戦相手は仙人-彼我木輪廻。相変わらず概念のこねくり回しが続くけれど、今回のは流石に空回りしているとしか言いようがない。西尾維新は戯言は書けても禅問答を書ける人間じゃない。
『王刀・鋸』の所有者、汽口慚愧戦。今、10巻も読み始めているのですが、このキャラクターだけ対戦相手の中では例外的に回想場面以外のところで再登場してます。アトガタリにあった様に本当に気に入ったようですね。私も大好きです。 せっかく各地を転々とし…
来たよ来たよ涙腺に来たよ。 一体、どれだけ涙もろいんだろうね私は。 無駄にイマジネーションを刺激する破天荒な文体はそのままに、アイデンティティの問題に関して結構真面目に考察してると思うんだ。 次巻が最終巻。もう出てるんですね。
読了。正直、『刀語』に物足りなさを感じていたのでいいタイミングで発行してくれたと思います。 個性的なキャラクターを魅力的に描きつつ、事件発生後に一気にそれを反転させて見せる人間の素朴さは、果たしてリアルさを求めた結果なのかエンターテイメント…
(http://www.kotensinyaku.jp/) 去年の10月に光文社から創刊された新訳古典文庫が面白い。岩波文庫のような苔の生えたような物(褒め言葉)とも新潮文庫のような広く浅く的な物とも違った肉厚なラインナップが魅力的。
(http://www.jali.or.jp/tti/) 来年1月、ライトノベル「ビアンカ・オーバースタディ」の第一回が掲載されます。詳細未定。 私の中では現代文学の二本柱は村上春樹と筒井康隆だと思っています。文学というフィールドの村上春樹と、SFのフィールドの筒井康隆…
第十五回日本ファンタジーノベル大賞大賞受賞の森見登美彦先生の最新作。 落語と文学の中間を行くような軽妙で飄々とした文体が魅力的。ただ事実を描写するだけの大衆小説の文体ともエンターテイメントのインフレ誤魔化しのライトノベルの文体とも違い、ただ…
日本最強を襲名した後という事で対決の主軸を肉体的要素から心理的要素へと切り替えた辺り、エンターテイメント慣れした西尾維新のセンスのよさが光る。
物語の方向性が見えてきた感じ。今までは"ワンネス"とかいう概念を漠然と追っていただけだったが、そこに至るために何をすればいいのかが分かってきた。
斉藤環先生の『戦闘美少女の精神分析 (ちくま文庫)』と照らし合わせながら読んでみたくなるような物語構成。MS少女張りの戦闘兵器に身を包んだお嬢・ボーイッシュ・不思議系キャラが右に左に大暴れして、男の子は無力感を抱えたままうじうじする話です。 ハリ…
私は草双紙のおいらんやお姫様の着物の色を選み、またその顎のしたにひとつのすじをいれ、眉のひきかたをちがえるなどいろいろと自分の好みをくわえて、そして昔の神様のように自分のこしらえたものを恋人にしてだいじに引き出しへしまっておいたりした。が…
特別、派手な設定を使わずとも「なんとなく面白いんだよなぁ」と思わせるのは清涼院先生の特徴でしょうか。 西尾先生がインフラへの固執を見せつつ、清涼院先生はこちらでは概念への固執で読ませてくれます。なんか、模型を制作しようとして一つの部品にひた…
副題が「薄刀・針」なのに全く話の中に出てきませんでした。 わざとこうしたのか書いているうちにこうなったのかは知りませんが、西尾先生は『天才』という言葉を物語の中に組み込むと妙に活き活きして来るような気がします。何かコンプレックスかあるのかも…
今年毎月刊行されることになった"大河ノベル"の第二巻。毎月シリーズが慣行されるというライブ感を味わってみたくて読み始めてみたのですが、これを知ったのが今年の6月。で、未だに二巻。 世間ではもう第九巻が発売されたそうです。ライブ感に追いつくには…
(http://book.asahi.com/news/TKY200704260138.html) 【三島賞】西川美和『ゆれる』(ポプラ社)▽本谷有希子『生きてるだけで、愛。』(新潮社)▽柴崎友香『また会う日まで』(河出書房新社)▽いしいしんじ『みずうみ』(同)▽佐藤友哉『1000の小説とバ…