読了 目には見えない何か作者: パトリシア・ハイスミス,宮脇孝雄出版社/メーカー: 河出書房新社発売日: 2005/03/26メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 3回この商品を含むブログ (14件) を見る

 最初のうちは分からなかったけれど、何か面白い物が隠されているような気がして、解説と本編とを行ったり来たりしながら読み進めていくうちに次第に面白く読めるようになった。
 この中に収められている短編の一つ「怒りっぽい二羽の鳩」辺りからこの人のやりたいことがおぼろげながらつかめるようになった。この話はいわば夫婦鳩の話なのだけれど、その中で描かれていることは人間のそれの縮図だった。こういう象徴性に立たせて現代人の不幸−例えば、結婚と仕事…等々が抱える矛盾とか歪みとかの表現なのだと思った。
 それにしても自殺する人間の多い作品集だと思った。思うに、自殺する人間を描こうとする人はその衝動を内在している人間だと思う。著者−パトリシア・ハイスミスは一応、普通に天寿を全うする形で生き抜いたようだけれども、それはただ作品にそのエネルギーを昇華することに成功したんだと思う。
 芸術との絡みがあった「狂った歯車」がお気に入り。
 痴情のもつれの話は私には分からない。