雨の日のイルカたちは作者: 片山恭一出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 2004/04/22メディア: 単行本 クリック: 1回この商品を含むブログ (13件) を見る

 『世界の中心で、愛を叫ぶ』で有名な著者。映画のイメージが先行して、エンターテイメント的なメロドラマ作家かと思っていた。ところが調べてみると、セカイ系の流れを組む作家ということで読んでみた。
 最初、よく分からなかったのだが一旦奥付を見てみると、この短編のうちの一つ『アンジェラスの岸辺』は実は単行本にまとめられる際に改題されており、その改題前の題名が『対火星人戦争前夜』ということでピーンと来た。サリンジャーだ。
 色々なことを考え、それらを内に溜め込んでいき、ソレを外に出すことなく自己完結させてしまう悲しみ。
 その中で差し挟まれる希薄な現実感。
 どこの箇所を切り取ってもその小説の全てを言い表せるくらいに象徴的な文章が多い。
 しかし、最後の『百万語の言葉よりも』は若干くど過ぎた。