スプライトシュピーゲル I Butterfly&Dragonfly&Honeybee (1) (富士見ファンタジア文庫 136-8)作者: 冲方丁,はいむらきよたか出版社/メーカー: 富士見書房発売日: 2007/01/01メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 95回この商品を含むブログ (169件) を見る

近未来型SF。


これでもかってぐらいに阿漕にエンターテイメントの王道を踏みつつも、SFのガジェットや神話の象徴性を上手く取り込みつつ物語が進む。
読み込むことの面白さのある一冊ではある。


各話ごとは主人公の三人のヒロインをクローズアップした物語を配されている。そしてソレは毎回、冒頭の神話に関連した『クイズ』とキャラクターの『生い立ち』、そしてソレを一手に象徴する『悪役』を倒すことでそれぞれのアイデンティティを確認していくという同じ構造を持っている。
各登場人物はまさに『キャラクター』であって、一定の行動パターンから外れることはないものの過去に裏打ちされた意外性が見られた時には静かなカタルシスが得られる。


他にも宗教と政治・経済の合理性という奥深さを持った『現実』と、一見『間の抜けた設定』の中に生きる『戦闘美少女』という『ライトノベル/エンターテイメント』とのチグハグ感がモラトリアムな僕達には面白くも悲しく響く。


ちなみに一巻は各主人公の紹介を兼ねた物語を終えた後に、そ敵役の背景が見えかけたところでとりあえず終わる。