青葉通でケヤキ伐採始まる 仙台市地下鉄建設
(http://www.kahoku.co.jp/news/2008/01/20080128t13031.htm)
仙台市の地下鉄東西線建設に伴い、青葉通（青葉区）のケヤキを撤去する作業が２８日午前、「西公園駅工区」で始まった。「一番町駅工区」でも、同日夜に作業を開始する
東京近郊に住む人にとってはどうでもいいことかもしれないし、東北に住む人間にとっても宮城県に住んでいなければただ聞き流すだけのニュースになってしまいそう。
けれどこれは案外日本全体の問題として捉えられる側面もあると思う。
仙台市は「杜の都」という『あだ名』がある。その「杜」の由来でもあるケヤキを撤去するというのは、仙台はもう「杜の都」でなくともいい。と主張しているようなものだ。つまり、「杜の都」なんて肩書きはどうでもいいから、交通網を整備して東京みたいになりたいということなんだろう。
今回の敷設される路線によって、今まで北から南に敷かれていた従来の路線の他に東から西に走る路線が追加されることになる。仙台市を中心に十字型の路線が出来上がると考えてもらえればいい。
でも、仙台の学校に通っている身としてはバスで十分に間に合う印象があります。
今の私達は、経済成長というのは「アフリカの辺境がニューヨークの中心みたいになること」だと無意識に思わされているのではないだろうか。
だから日本の田舎は皆東京になりたがる。田んぼをつぶしてビルを建てたがる。そして食料の供給を「東京になれないヤツ」に押し付ける。その癖に、どこかの地方自治体が赤字破綻をしても他人事のように取り扱う。「多分行政能力が足りなかったんだろう」と思う有様。何でも東京が一番で、その次に神奈川や大阪が続くんだろうという無意識の順位意識。
まるで学問の面白さが損なわれた受験戦争みたいだ。「東大が駄目なら早稲田」で「早稲田が駄目なら筑波」「筑波が駄目なら東北大」「東北大が駄目なら福島大」なんて思考回路がまかり通るのはそんな意識のせいだ。人間を縦一列に並べて一番前にいる奴からこちらの席へどうぞ。だから就職対策用の面接マニュアルだの「一般常識」を問うテストの対策本だのが出るおかしな状況が生まれる。どこからおかしくなったのか分からないけれど、とにかく今の日本はおかしいと思う。人間は縦一列に並んでいるんじゃなくて、縦横無尽あちこちにいてそれぞれが好き勝手な方向を向いているっていうことをきちんと頭に入れておかないといけない。
だから本来物事には優れている物/劣っている物の区別はない。数学が出来なけれりゃ文学があるし、学問が駄目なら運動があるし、何もかもが駄目でも感情がある。運動が得意で学問が苦手な奴に無理矢理勉強させたら、本当にその人の何もかもがおかしくなってしまうと思う。私の中の「引きこもり/ニート」問題はこの辺に焦点があると考えています。
歩くことよりも自転車で行くことの方が「優れて」いて、自転車を漕ぐことよりも車を運転することの方が「優れて」いるんだろうか? バスが電車よりも優れているのだろうか、ケヤキの木よりも地下鉄の方が優れているのだろうか。山形*1よりも宮城が、宮城よりも東京が? 何もしないよりも読書が優れていて、読書をするよりも携帯をいじることの方が優れている? そんなはずはないのに、皆がだんだん同じモノになっていく感覚が非情に怖い。
日本が全部東京になったらどこにいても同じなのだから僕がここにいる意味がなくなる。「東京に住んでいる人間」が増えて皆「東京人」になる。
自身の価値はそれぞれが持っているはずだと思う。
私は田舎嫌いの東京好きだけれどもそれは別に田舎が都会よりも劣っていると思ったからではなく、アニメと漫画と小説と文化について語る友人が欲しくて東京にはそういう刺激があるからというだけのこと。
「田舎への恨みを持った東京に憧れるオタク趣味の人間」というのは全てが東京になった世界には存在しなくなる。田舎に住んでいる人間が東京で田舎の話をすれば、それは東京の人にとって「経験できないこと」なのだから「面白いこと」のはずだ。
それぞれが違って面白い世界というのは地下鉄もケヤキもどっちもいいと思える世界のことだ。
もし地下鉄に憧れる田舎が増えればそれだけ他の田舎を蹴飛ばしていくことになる。美しい田園が減る。競争に参加して負ければ残るのはパチンコ屋だけだ。
「労働や経済活動」を「遊びではないんだ厳しい世界なんだ」というのなら競争なんかしている場合じゃないはずだ。もう今の日本経済はゼロサムゲームで、そのほとんどが「他者の物を掠め取る」ことに向かっている。それを無意識の下に殺して「これが大人」なんだといい捨てる。
本当に生きることを厳しいモノと思うのなら、「共存」ということを考えていかなければならないはずだと思う。
*1:地下鉄がありません
