クリス・クロス―混沌の魔王 (電撃文庫 (0152))作者: 高畑京一郎,きがわ琳出版社/メーカー: メディアワークス発売日: 1999/08メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 95回この商品を含むブログ (29件) を見る

面白いとはこういう事かと思い知らされた。
構成は単純ながらも込み入った設定でグイグイと引っ張られる。


良質的なジュブナイルという感覚もあるし、近代的なSF小説ともいえる。


文章に若干のつたなさを感じてしまったのだけれども、この小説の場合では内容の面白さがそれをカバーしきっている。
そのおかげで嫌味の無い文章として逆に読める。(擬音を文字でそのまま表現するのが嫌いな人は嫌いなのでしょうが)


自意識とか現実とか架空とかがうねうねしていく感じが好きな人にはお勧め。
『ゲーム』を題材にとっているから、感覚として『僕たち』にはしっくりくるものがあると思う。
RPGのような役割分担的な人物の表現の陳腐さを逆手に取っているのも巧みだと思う。


現実と空想の区別をつけることができたとしても、その人の過去とか経験といったものは断続することなく連続しているはずなのだ。
人間の意識を言葉にするからこそ生まれた小説でもあるし、可能性があるからこそ生まれた面白さだと思います。


ラストの後味の悪さが、余韻としていつまでも響くのは良質の証だと思う。