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 個人的好奇心から分裂症とか自閉症の本を読んでいるのだが、その本の中でこの映画が取り上げられており興味半分で観てみた。
 自閉症者のサンプルとしてこの映画を観るつもりでいたのだが、途中からそんなことも忘れていつものように物語を楽しんでいた。
 

 この映画は実在の人物に取材したものだ。実在を題材に取ったとはいえ、架空も現実も人間の言葉一つの違いで様相を変化させるもの。どんな風に楽しんだらいいのか分からない。


 面白かったのがやはり主人公のデヴィッド・ヘルフゴッド。
 デヴィッドが精神に不調をきたすのは物語の途中からなのだが、不調をきたした以降の出来事に対しての彼の反応はそういう一見何の脈絡もないもの。
 しかし、自閉症者というのは「頭がおかしい」ということではない。にわか知識で恐縮だが、自閉症者が脈絡の喋り方をするのは「自分内のルール」で言葉を口にするかららしい。
 そういうことを踏まえてデヴィッドのセリフ一つ一つを聴き取ってみると、決してそれらは無意味な単語の羅列ではないことに気づかされる。彼が口にしているのは物語中で主人公自身が今までの人生の中で他人から言われたりもしくは自身がさりげなく耳にしていた言葉の切り貼りなのだ。


 何かを思うことは決して単純なことではない。我々はそれらの思いを他人に伝わるように筋道立てて説明しようとする。
 しかし、自閉症者は感情の奔流をそのまま口にしてしまう。それゆえに、感情がとても純粋にあふれている。
 形のないものに無理に形を与えれば歪むばかりだ。


 そしてソレは、主人公がピアノという無形文化に傾倒していった事とも決して無関係ではないだろう。
 父親が子に自身の夢を託す、というシチュエーションのもとデヴィッドはピアノを弾くことになるのだがソレはやはりきっかけに過ぎない気がする。


 芸術には犠牲がつき物、だというのは歴史が証明しているがデヴィッドの場合もそのようだった。
 何せ、精神に不調をきたしてしまった原因が芸術への過度の熱中だったのだから。