プラネタリウムのふたご作者: いしいしんじ出版社/メーカー: 講談社発売日: 2003/04メディア: 単行本 クリック: 16回この商品を含むブログ (90件) を見る

 大学生協で「読書マラソン」という企画の中で見かけたブックレビューが良かったので読んでみた。


 そのブックレビューにもあるようにこの本のテーマは「だまされる」こと。
 童話のような全体の語り口に騙されがちだがこの物語が訴えていることは実に辛辣で切実だ。
 空想力とか想像力とかいったものが人生を楽しむということの最終防衛ラインであるということは、ロボットと人間の違いを考慮するまでもなく明らかだ。
 アニメだって少しずつ変化をつけた一枚絵の連続だと決めつけることに何のメリットもない。物語の中でキャラクターが生きているのだということが面白みだ。
 そういったことが実に様々な登場人物と題材を経て、繰り返し例示している。
 特にラストの「テンペル」と栓抜きの会話のシーンの仕掛けが単純ながら秀逸でこの物語の総括ともいえる。
 物語を読むことそれ自体が、この物語の主張する所に取り込まれていて実に面白い。
 物語の中だけで終わらせたくない魅力を持っている。