読了報告 佐藤友哉「エナメルを塗った魂の比重」
読み終えてみて、この題名はセンスがいいと思った。
運命に踊らされる少年少女の悲劇をとことん冷静に描ききった点で安っぽくない「本物っぽさ」を醸し出しています。
けれども、全体に流れる雰囲気はどこか投げやりで、著者の癖なのか「あっそう」「嘘だけど」といったニヒルな言葉が繰り返し使用されています。
また、事件が収束に向かっている場面にも拘らず、「言葉にした途端事実になる。便利だね」の台詞に代表されるように、世の創作著作物全般に喧嘩を売るような歪んだ姿勢を見せています。。
佐藤友哉を読み解くにあたっては、大塚英志の著作物を一通り読んでおいた方がいいと思う。もともと、佐藤友哉は大塚英志のプッシュを受けて世に出てきたわけなのだし。
大塚英志の「多重人格探偵サイコ」の後書きなんかが特に参考になると思う。
それはつまり
「サブカルチャーはサブカルチャーのままに追いやれ」
という事。
それを知った上で佐藤友哉を読めば、また一段と味わい深くなると思います。