舞城王太郎『山ん中の獅見朋成雄』()
自己のアイデンティティの喪失。主人公が不思議世界に迷い込んで、その中で…。
といった感じの内容。
『文化』を脇軸に置いて、『オリンピックへの可能性を失ってしまった』主人公‐獅見朋成雄の成長を描いた作品です。
ところで思っちゃったんですけど、これって『千と千尋の神隠し』に似ているなぁ、とか思ってしまったり。
『千尋』は名前の一部を湯婆々に取られ、獅見朋成雄は鬣を剃られてアイデンティティの一時喪失を経験する。
一旦自分をリセットした後、異世界で労働を課せられ、今までの常識が通用しない世界で自分を試す。
その後、手引き者(『千と千尋〜』ではハク、『山ん中〜』ではモヒ寛)によって現実世界への脱出を図る。
過去を思い出し、自分を取り戻すという点でも『千と千尋〜』との共通点が見られる。
真っ直ぐに流れる物語の中に端的に示される一文にハッとさせられるものがありました。