舞城王太郎『熊の場所』()

 ミステリー小説から出てきた舞城王太郎はやはりその事に対する呪詛を込める義務がある、というのが本人の中にある考えなのだろうか?
 本著には短編が三つ掲載されている。そのいずれもの作品が、殺人・猟奇・暴力に対する呪詛が感じられる。


 村上春樹は時代を描く作家としての立場を持っている。その精神は舞城王太郎にも見られる。
 多分、これらの作品は『酒鬼薔薇聖斗』と時代を同じくした僕達へのメッセージなのだと思う。価値観迷走の日本の中で生きる僕達は『当たり前の事』に無自覚になりつつある。そんな僕達に対して舞城王太郎は人間味溢れる福井弁で叱咤激励してくれる。
 いいよ舞城王太郎