パリの憂愁 (岩波文庫)作者: ボードレール,Charles Baudelaire,福永武彦出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1966/01メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 9回この商品を含むブログ (6件) を見る

 面白い本を読むたびに、その面白さをどのようにして伝えようかと毎回悩む。悩んだ末、「面白かった」の一言で済ませてしまうことがたびたび。結局、大言壮語な美辞麗句を使おうとしても向こうとこちらとの温度差が空しいだけで、恥ずかしくなってしまうんですよね。
 サブカル系だと、「萌え」とか「エロ」で誤魔化せるんですが。


 この本もどうしようもなく面白かった。小説なんだか、詩なんだか、エッセイなんだか分からない形式をとったこの本はとりあえず散文として位置づけられる存在。簡単に言ってしまえば、作家が思いついたことをはらはらと書き綴ってとりあえずひとまとめにした本。その人がパリに住んでいたからパリ。その人が憂愁の人だから、その人が書いた文章はおのずと全てが「憂愁」になる。そんな『パリの憂愁』
 別にこれがその意図を以ってして書かれたわけじゃないんだけれど、僕はこれを読みながら自分の人生を振り返らせた。
 これには縦横無尽に広がる作者の創造力しか描き出されていないんだけれども、その作者の倒錯がひたすらに悲しかった。ボードレールに自分の思考の枷を解いてもらった感じがした。だから、人生というものについて考えさせられたんだと思う。