完訳 グリム童話集〈1〉 (岩波文庫)作者: W.グリム,J.グリム,金田鬼一出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1979/07/18メディア: 文庫購入: 3人 クリック: 73回この商品を含むブログ (31件) を見る

 よく童話の原作が残酷であることを薀蓄語りしつつ面白がる人がいますが、そういった物の見方はとんだお門違いだと思います。
 童話は子どもの読み物だから、それは牧歌的なファンタジーで当たり前だと考えるのは想像力の欠如が生んだ大人の偏見でしかありません。
 

 とは言え私も私なりの童話観でしか話は出来ません。それでも私の考えを述べさせていただきますが、童話というのは子どもが直感的に生きる知恵を得るための教訓書だと考えています。
 グリム童話の中でやたらと肉を裂いたり食べたり焼いたりといったような場面が出てくるのは、それだけ中世ヨーロッパではそういった行為が身近で行われていたことの映しに過ぎません。自分達で家畜を育て、自分達で捌いてきたのだからそれが本来の生活であるということでしょう。
 目のまで肉親が死ぬことを目の当たりに、生命の不思議について考える機会に恵まれた人々はこうした中から物語を紡いでいったのだと思います。


 グリム童話の中では「じゅみょう」の話が私のお気に入りです。猿、犬、馬、人間のそれぞれの寿命は最初30年だったのだけれど、人間以外の3匹の動物は「生きることが辛い」と神様に寿命を縮めてもらい、人間は30年では短いとそれぞれの動物の縮めた分の寿命を貰った話。だから人間は30歳を過ぎると、馬のように重荷を背負ったり、歯を失った犬のようにうろうろしたり、年を取れば猿のように子ども達の笑いものになるんだという話です。