原始人 (文春文庫)作者: 筒井康隆出版社/メーカー: 文藝春秋発売日: 1990/09/10メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (15件) を見る

 全13作の短編集。
 全ての作品に共通して見られるのは現実と虚構を破壊しようとしている模索感。
 熱心に読んでいると「あ、ここで虚構と現実の境目が壊れた」と思わされる一文がどの作品にも必ずあり、面白い。
 作為的なものが偶然かは知らないけれどただひたすらに読者に愚痴をはいているだけのように見える『読者罵倒』の中で「風景がイメージできる文章が全てではない」と「不思議の国のアリス」を引き合いに出しながら啓蒙した後に、神話のパロディと駄洒落や造語次々と現れてくる『不良世界の神話』を持ってきたことにはある一種の感動を覚えた。
 どの小説も実験的な不安定感はあるけれども、言葉だけの世界だからこそ作り出すことの出来るエネルギーを随所に認めることの出来る内容だと思います。

二次元キャラとの結婚を法的に認めて下さい

(http://www.shomei.tv/project-213.html)


 馬鹿だなぁ。法律というのはいわば手続き的な証明手段に過ぎない。二次元への愛というものはもっと純粋で美しいものなのに、それをわざわざ俗的なものに落とすことはないだろうに…。
 嫁が一人の人間なんているのか。

東方キャラソート

(http://mainyan.sakura.ne.jp/thsort.html)


 以前流行した声優ソートの東方版。開始前にシリーズ指定が出来る上に、一部キャラクターには画像アイコンも。

1.紅美鈴 2.博麗霊夢 3.射命丸文 4.霧雨魔理沙 5.鈴仙・優曇華院・イナバ 6.蓬莱山輝夜 7.チルノ 8.八意永琳 9.フランドール・スカーレット
10.八雲紫 11.伊吹萃香 12.水橋パルスィ 13.西行寺幽々子 14.リグル・ナイトバグ 14.ミスティア・ローレライ 16.ルーミア 17.大妖精 18.レミリア・スカーレット 19.十六夜咲夜 20.霧雨魔理沙魔梨沙

屍鬼〈上〉作者: 小野不由美出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1998/09メディア: 単行本購入: 14人 クリック: 2,926回この商品を含むブログ (68件) を見る

屍鬼〈下〉
 こういうことを小説で書いてしまえる人間は世間が汚らわしく見えて仕方がないのではないか。
 人間のエゴや醜さ、日本人特有の精神の弱さ、怠惰さの観察は確かなもので、それをエンターテイメントにまで昇華する技術も見事。文学と大衆小説の合いの子の一つの完成形じゃないかと思う。


 舞台は外場と呼ばれる村。そこに一つの洋館が移築されたことから物語が始まる。
 その出来事と前後して村人の突然の死が、それがまるできっかけであるかのように相次ぐようになる。
 物語はその死とじかに接することになる村唯一の医者と寺の副住職がその謎解きをする形で進行するのだけれども、そのロジックがいかにも「おとぎ話がおとぎ話に返された後の現代」の物語の課題にぶち当たることになる。
 話は次第に「吸血鬼」という答えに行き着くのだけれども、もちろんそれを否定するのは現代の常識。
 これが「物語」だったらなんだかんだで登場人物たちは吸血鬼という架空の存在を受け入れるのだけれども、それをそうしなかったのが小野不由美の強さだしこの物語の厚さ。
 物語の後半では吸血鬼を信じざるを得ない状況になっているにもかかわらずそれを信じない、という価値観の逆転が起こるのも面白い。


 各節、章毎に視点は村の子どもや大人の間を転々とするのだけれどもそれらのどれもが生臭く、汚く、醜い。
 特に「現代の」「田舎」である舞台を十分に活かし、世代間の価値観の相違、田舎と都会の価値観の相違をこれでもかと突きつける。この物語は「一人一人が主人公ではない」物語じゃないかと思う。特に「都会の大学を志望する高校生」である夏野という登場人物の内面描写がいい。自分に好意を寄せていた同級生が死亡し、その同級生の友人が、死んだその女子の書きかけの手紙を夏野に渡そうとすることを「メロドラマの延長を現実に求める」ようなものだと切って捨てる。こういった考えかたをするキャラクターは今までに無く新しいが、現実にはそういう傲慢さを嫌う人間は確かに存在し始めていると思う。
 人間の弱さをここまで突きつける内容はアニメで言えば『無限のリヴァイアス』に近いものが感じられた。
 読んでいて不愉快になる物語ではあるが、これを不愉快に思ってしまう理由は多分読者の弱さに由来してくることなんだろうと思う。